第3章 知っていると知っているつもり

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知ってるつもりと言う無知

ネットで何でも調べられる時代において、間違えやすいのが「知っている」と「知っているつもり」の違いです。

ネットで調べると言う事は「知っている気」になっているだけで、本当の事は何も分かっていないのです。

例えば、「盗聴されているかもしれない」と思いネットであれこれ調べたとします。

そして業者のページを見ると、色々な事例や方法が書いてあります。

しかし、第1章で書いたように、依頼者のお宅に着いている確率は1/1000以下です。

実は、殆どの業者は技術は持っていても本物を見つけた事が無いのです。

業者の発する情報には必ずベクトルが入っており、そのベクトルは利益に繋がるように書かれています。

つまり、どれほど高度な技術を持っていても、発見業者を名乗っていて実際に見つけた事が無いと正直に書いていたら誰も依頼しませんよね。

ですので、書かれている事例は「作り話」が大半を占めているのです。

しかし、読む人にはその虚実は分かりません。

殆どの人が「業者が書いている事だから事実だろう」と信じてしまうのです。

これを「権威性」と言います。

人はそこに権威性を感じると、経験した事が無い話でも信じてしまうのです。

信じるだけなら良いのですが、それを現実だと思ってしまうのです。

つまり、知っている気になっているだけで、本当は何も知らないのです。

 

経験で学ぶ必要性

全ての動物は経験によって学びます。

人間は文字や言葉で学びます。

それ故、自分の経験を他者に伝え、後世に知識や技術や経験を伝えることが出来るのです。

しかし、その文字や言葉で覚えた知識には、同じ経験が伴わなければ妄想と変わらないのです。

その代表的な物が「アポロ11号の疑惑」です。

人類で始めて月に行ったアポロ11号には幾つかの疑惑が持たれました。

その一つが、月面に立てた旗です。

空気の無い月面に立てた旗がはためいている映像を見た人が、「空気の無い月面で旗がはためくのはおかしい」と捏造説を唱え始めました。

そう言われると尤もの様に思えてしまいます。

そして、空気の無い月面で旗がはためくのはおかしいと思った人は捏造説を信じ、他にも色々とおかしい所を見つけてしまうのです。

例えば、砂浜に残った足跡は崩れてくっきりとした足跡にならないのに、月面の足跡はクッキリ残っているから怪しい。

確かに、砂浜などに足跡をつけてもクッキリと残りません。

しかし、それは使う理屈が違うのです。

人は自分が経験で知っている環境で物事を考えてしまいます。

月面と言う、水も空気も無い環境の事を、知っている情報を駆使して考えるのですが、空気が無い、重力が小さい程度の事しか思い浮かびません。

それ故、捏造説に信憑性を感じてしまうのです。

 

しかし、空気が無いと言う事は、空気抵抗も無いと言うことです。

空気が無い月面で旗がはためくのは、立てる時に揺れた為、慣性の法則で動き続けているのです。

空気が無い事から、慣性の法則が思い浮かぶ人はまずいません。

それは、身近で経験していないので思い浮かばないのです。

足跡がクッキリ残るのは、地球の砂は風化によって作られますが、月の砂は隕石の衝突で舞い散った粉塵が積もった物です。

衝突で発生した粉塵は、水や風で風化しませんので角が尖った砂なので、足跡がクッキリ残るのです。

これも、月の砂を地球の砂と同じに考えてしまうので、そう言った疑惑が生じてしまうのです。

そして、これらは実験で確かめる事ができます。

このアポロ11号の捏造説は、疑心暗鬼になった人の行動を如実に表しています。

それが「探す」と言う事です。

「旗の動き」と言う一つの疑惑が見付かると、疑惑の目を持って他の怪しい所を探すのですが、月面など経験したことなど有りませんので知っている常識だけで探してしまうのです。

そして、足跡の違いを見つけたり、その外にも「影なのに明るい」だから照明を当てている等、様々な怪しい所を探して積み上げてしまうのです。

因みに、影なのに明るいのは月が太陽の光を反射しているからで、月全体がレフ版なので明るく映るのです。

 

ネットで調べる事の危険性

このアポロ11号の捏造説を信じる人の特徴は、第一に「疑いを持っている事」でそれが「不信」です。

第二に「疑いの目を持ち怪しい物を探す」と言う事です。

怪しい物を探すと言う事は、怪しくない所はスルーして、怪しい物にしか興味を示さなくなってしまうのです。

また、「怪しいとは知らない事」ですので、怪しい物を探すと言う事は、知らない事を探して怪しんでいるだけなのです。

そして第三に「怪しい情報だけを収集」してしまうのです。

怪しい情報が集まると、疑惑が確信に変わります。

その状態は、自分の疑惑に都合の良い偏った情報だけ集め、都合の悪い物は拒絶している状態です。

その情報の偏りを「情報の非対称性」と言い、そこで発生するのが「逆選択」と言う現象です。

ネットで調べると言う事は、自分の求める情報ばかり収集し、興味の無い情報に目を通そうとはしません。

そこに情報の非対称性が生まれ、逆選択に陥ってしまうのです。

そしてネットで調べる時、自分の知っている範囲での判断になるのですが、殆どの人は実際の盗聴器とか盗撮カメラの事など知りません。

それをネットで調べても、内容の真偽など分かるはずもありません。

真偽も分からず、ネットに書いてある情報をつまみ食いして、知った気になっている人がとても多いのです。

極端な人になると、ネットで「ピンホールカメラは1mmの穴があれば撮影できる」「電源があれば撮影できる」と言った情報をつまみ食いして知った気になり、AV機器に付いているリセットの穴を見付けて「盗撮カメラだ」と思い込んでいた人がいました。

それは、我々から見ればカメラではない事は一目瞭然でなので「多分違いますよ」と言うと、「あなた本当にプロなの!」と怒り出す始末。

カメラと言う物は、被写体にレンズを向けなければ映りません。

AV機器の穴は裏側についていて、裏側は壁に向いていたので、カメラが仕込まれていても映りませんし、仕掛ける人もそんな向きには設置しません。

しかし、その人はネットで隠しカメラのレンズの穴を見て、それと同じ様な穴を見つけて「盗撮カメラ」と確信していました。

恐らくその人は、盗撮カメラと同じ穴を見て「多分違う」と言われたので、この人は「盗撮カメラの穴を知らない」と思ったのでしょう。

そして、穴の中を覗いたのですがレンズは無いので、「レンズも有りませんよ」と言うと「ネットに穴があれば写せるって書いてありました、あなたプロなのにそんな事も知らないの!」と言われ追い返されました。

長年調査をしていると、こんな人に度々遭遇します。

そうならない為にも、ネットで調べる前に調査をして、調査と同時に正しい知識を実験を交えて経験として学び、その上で出来る事と出来ない事を理解する事です。

その経験としての理解が無ければ「穴があれば写されてしまう」の様に、主観に左右されてしまいます。

 

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