第5章 ストレスによる異変

自律神経失調症

ストレスは体の様々な所に影響を及ぼします。

その代表的な物が「失調症」です。

体がストレスに苛まれるとまず自律神経のバランスが崩れ、自律神経症状が出始めます。

耳鳴りが聞えたり、目が乾いたり、体温調節の調節が上手く出来ずに汗をかいていたと思えば急に震えだしたり、下痢や便秘になったり、動悸がしたり症状は千差万別です。

自律神経症状が出始めた時点で通院すれば良いのですが、殆どの場合「疲れているのだろう」と軽く考えてしまいます。

しかし、自律神経症状は鬱病の予兆でもあるのです。

ストレスホルモンが分泌されていると緊張状態が続く事になります。

緊張状態は交感神経優勢の状態ですので、その状態が継続すれば自律神経のバランスが崩れて自律神経症状が出始めるのです。

つまり、第4章で書いた鬱病発生のメカニズムの継続的なストレス状態にあり、自律神経症状は鬱病の予兆でもあるのです。

この自律神経症状を電波や超音波による嫌がらせだと言う人さえいます。

 

難聴と幻聴と聴覚過敏

被害妄想による盗聴を疑う人の多くや、多くの人の被害妄想の原因を作っているのが、この難聴と幻聴と聴覚過敏なのです。

発生のメカニズムは鬱病と同じストレスです。

鬱病葉ストレスによる血行不良で脳細胞がダメージを受けて脳細胞が死んだり弱ったりして発症しますが、ここで言う難聴は同じメカニズムで耳の有毛細胞が死んだり弱ったりして発症します。

聴覚過敏はダメージを受けた脳の機能不全で発症します。

第4章で書いた豊中の隣人殺害事件など、多くの騒音系隣人トラブルは、この聴覚過敏が原因です。

その度合いはと言うと、小声の会話が怒鳴るように聞こえたり、シャワーの音が滝の轟音に聞こえたりするのですが、本人には聴覚過敏の自覚が無いので「他人の嫌がらせ」にしか思えないのです。

その為相手に文句を言いに行きます。

騒音が煩いと文句を言われた人は、騒音を出した覚えは無くても「ひょっとしたら」との思いで謝ってしまいます。

それでも原因は自分の体ですので、何度文句を言っても音が無くなる事は有りません。

そうなると、もう嫌がらせにしか思えないのです。

特に、「文句を言った」と言う自責を持っている為、「文句言った腹いせに」と思ってしまうのです。

この聴覚過敏は、経験上「双極性」の症状を呈している人に多く見られました。

 

有毛細胞による難聴は老人性難聴とは違い、聞えが悪くなる訳では有りませんので自覚できません。

部分的な発音が聞えないのですが、聞えなかった部分を脳が補完してしまうので自覚できません。

しかし、脳が異なる補完をすれば言葉の意味は全く異なってしまいます。

その脳の補完に影響を与えるのが、その時の精神状態です。

その極端な例が「幻聴」です。

「幻聴」と言うと直ぐに統合失調症の症状と決め付ける人も多いのですが、統合失調症に限った物ではありません。

これも基本は「脳の補完機能」で、誰にも備わっている能力なのです。

 

盗聴を疑い人の多くはこの幻聴が聞えていました。

自分の行動を指摘する声が聞こえていたり、自分の考えているだけの内容が聞えてきたりしているのです。

例えばテレビを見ている時に「あ、テレビ見てる」と言う声が聞えて来たり、ご飯を食べている時に「ご飯食べてる」と言う声が度々聞こえて来たら、盗撮を疑うのは至極当然の事だと思います。

しかしこれも原因はストレスです。

扁桃体が危険や不快を感じてストレスが発生するのですが、問題は扁桃体が危険を感じている所にあります。

危険を感じていれば当然危険を察知しようとします。

そして360度暗闇でも危険を察知できる感覚は聴覚しかありません。

ですので聴覚が過敏になってしまうのです。

それが度を越えると、脳が騒音や雑音の中に自分への悪意を探そうとしてしまうのです。

その結果、騒音や雑音を声に補完してしまうのです。

ですので、声が聞えるのは雑多な音が有る時だけで、無音の時には聞こえていません。

そうした人の話しでは、音が無くて声が聞こえていない時は「耳がボーン」とした感じになるそうです。

聞こえる声は、自分の脳が作り出す声ですので、自分の行動や考えが筒抜けになっているのは当然なのです。

幻聴で盗聴や盗撮を疑っている人の調査を行っても出てくるはずはありません。

調査を行った業者がこうした心理的要因を知らなければ「ありませんでした」で終わってしまいます。

しかし、依頼者からすれば調査をして「無い」と言われても、聞え続けますので、次なる発想は「調査で分からない高度な技術」とか「技量の無い業者だった」と言う発想になってしまいます。

するとネットで荒唐無稽な技術論を探し出し「これで狙われている」と妄想を拗らせてしまったり、何件もの調査業者に調査を依頼して散財してしまう事になってしまいます。

 

記憶障害

ストレスが継続すると海馬にも影響を及ぼします。

海馬は短期記憶を司る為、記憶障害が発生する事も珍しくはありません。

例えば、鍵を開けた事を忘れてしまえば「開けられた」と思ってしまいますし、お金を使った事を忘れてしまえば「盗まれた」としか思えません。

記憶障害系で多いのは、机が少し動いていたとか、米や醤油が減っているなど、一寸した変化で侵入を疑います。

酷い場合は数分前に自分で言った発言さえ忘れてしまいますし、直前の行動も忘れてしまいます。

「獲られた物が戻されていた」などと言う発言があれば、十中八九記憶障害です。

また、時間経過と共に記憶の改竄が行われる場合のあります。

例えば、DVをしていた人が半年後にはDVをされていたと記憶が変わっている事も珍しくは有りません。

記憶障害は、その人の記憶が消えているので、その人にとっては誰が何と言おうと真実なのです。

他者が「それは違う」と言っても、自分を騙そうとしているとしか思えません。

記憶障害は録画をするなどして、自覚に導かなければ納得することは出来ません。

 

認識力の低下

ストーカーに付けねらわれている、いつも先回りされている、だからGPSで居場所を知られているなどと言った場合、多かったのは認識力の低下です。

「いつも同じ人が」と言った場合、第三者が確認すするまで事実関係は分かりません。

実際にあったケースですが、この人がここにも居たと言って二枚の写真を見せられたのですが、我々が見ると全くの別人ですが、その人には同一人物に見えているのです。

例えば、坂田利夫と松山千春が同一人物と言っているのと同じです。

そうした人の特徴的なパターンは、特徴的な類似点があれば同じに見えているのです。

坂田利夫と松山千春の例で言えば頭のハゲ方です。

その外にも、同じ色の似た感じの服であったり、同じ髪型であったり、金縁メガネだったり、一部の類似点で同一人物に見えてしまっているのです。

軽度な人は遠目の時だけに起こり、重度な人は写真を見比べても「雰囲気は違うけど同じ人」と言う人さえいました。

考えられる原因は脳の機能低下と補完です。

 

他者の行為同に対する意味付け

扁桃体が危険を感じていると、他者の行動に勝手な意味付けをして自分への悪意を感じてしまいます。

それは幻聴の視覚版とも言える状態です。

幻聴が、騒音や雑音の中に自分への悪意を探そうとしてしまうのと同じ様に、他者の行動に悪意を探してしまうのです。

例えば、携帯やスマホを捜査しながら歩く人は何処にでもいます。

そうした人は、スマホを見ながら時折前を見て、またスマホを操作して歩きます。

それを、「自分の写真が送信されていて、自分を見付けて居場所を送信している」と言ったように感じてしまうのです。

街中で電話をしている人を見かければ、自分の事を通報しているかのように感じたり、窓を拭いている人を見て自分に合図を送っていると言った人もいました。

顕著な例になると、ミニスカートが似合うスレンダーな女性が横断歩道で横に立ったり、電車でブーツの似合う女性が横に座っただけで恐ろしい嫌がらせと言う人さえいます。

面白いのが、その人にダイエットを奨めて体重が減ると、嫌がらせも少なくなったそうです。

テレビ局からの監視や嫌がらせを訴える人も珍しくはありません。

多い例としては、自分が動くとテレビキャスターが笑うとか、自分の悪口をテレビで芸能人が言うとか、気分の私生活をドラマにされたなど、実に多彩です。

テレビのキャスターは「今笑った、見たでしょ」と言うのですが、全く笑ったようには見えませんでした。

つまり、認識力の低下で、表情が読み取れなくなっているのです。

芸能人が悪口と言うのは、ありふれた日常を面白おかしく言っているだけなのですが、ありふれた日常が自分だけの特別な事と思っていましたし、私生活のドラマ化も同じです。

例えば、人が寝る時には横になって寝る人もいれば仰向きになって寝る人もいますが、横になって寝るのは自分だけだと思っていた人が、テレビドラマで横になって寝ているシーンを見て、テレビ局が盗撮していてると思い込んでいた人もいました。

こうした事は人の行為に限った事ではありません。

物や動物に対しても同じ様な感覚を抱きます。

例えば、物系では衛星放送のアンテナを見て、自分の声を集音されているとか、街の中の防犯カメラで監視されているとか、送電線の鉄塔から電波攻撃を受けているとか様々です。

動物系では、鳥の目にカメラが仕込まれていて監視されているとか、猫の目にカメラが仕掛けられているとか、ハエとか蚊だとか実に多彩です。

何に不安を感じじて危険と認識するかは扁桃体次第で、扁桃体が危険と感じた物に疑念を抱いて脅えますので、何に疑念を抱くかは個人差があります。

通常の脳ならば、論理的に考えば「有り得ない」と考える事でも、扁桃体が危険を感じていると前頭葉の活動が押さえられているので、荒唐無稽な妄想に捕らわれてしまうのです。

因みに、扁桃体に押さえられている前頭葉は、扁桃体の感情に沿った思考しか出来なくなりますので、正常な思考を求めるのは無理です。

例えるなら、東京スカイツリーの展望台の床が、全面反射しないガラスだった場合、ガラスが有るのか無いのか分かりませんし、ガラスがあると分かっていてもガラスの上を歩くのは怖い物です。

ガラスが有るのか無いのか認識出来なければ「大丈夫だから」と言われても歩ける物ではありません。

手で触り、ガラスがある事を確認したとしても、ガラスの上を歩くのには相当な勇気が必要ですし、ガラスが有ると分かっていても一歩も踏み出せない人もいます。

それは、前頭葉で理解していても扁桃体が危険を感じていれば体を動かそうとしても動かないのです。

丈夫なガラスだから人が乗っても大丈夫と言われても、ガラスが割れたらどうしよう、ガラスが割れたら落ちて死んでしまうなど様々な事が頭ををよぎり、ガラスが割れて落ちるシーンなどが頭に浮かんだりもしますし、人によっては「そんな事分からないじゃない!」とヒステリックになる人もいます。

それこそが妄想であり扁桃体の感情に沿った前頭葉の思考です。

 

この例にはもう一つ別の意味があります。

ガラスの上を歩ける人には、怖がって歩こうとしない人が単なる臆病に見えたり腰抜けに見えたりしますが、怖がっている人は命懸けなのです。

それと同じ構図が被害妄想を抱える人とその家族にも多々見られます。

扁桃体が不安や危険を感じるのは、言わば自分の存在の危機を感じていて、それは命の危険を感じている事に等しいのです。

それを「妄想」の一言で軽んじている人が実に多いのです。

例えば、奥さんが被害妄想状態になって調査に呼ばれたお宅で、調査をしても盗聴器や盗撮カメラが無かった時に、ご主人から「そらみろ、思い過ごしだっただろ」と言う言葉が出る事は珍しくはありません。

時には、ご主人の留守中に奥さんから調査を依頼され、調査中にご主人が戻り「お前、まだそんな事をやってるのか!」と目の前で修羅場が繰り広げられる事もあります。

本人からすれば命懸けですので、そうしたご主人などのご家族の対応は本人からすると、サファリパークは動物園だから大丈夫と言って車の外にいるのに置き去りにする様な物です。

 

こうした事例をまとめたのが「電波な人々」「電波な人々Ⅱ」です。

 

最初から読む

 

第4章 ストレスと精神疾患

ストレスとは

現代社会はストレス社会とよく耳にします。

そして、鬱病などの精神疾患の原因もまたストレスと言われています。

そのストレスとは一体何なのでしょう?

一言で言えば、ストレスは脊椎動物が獲得した防衛システムです。

扁桃体が危険を察知するとストレスホルモンが分泌されます。

ストレスホルモンが分泌されると緊張状態となり、機敏に動ける様になり敵から逃げて身を守るのです。

このメカニズムは短期間なら有効ですが、持続すると問題が生じます。

ストレスホルモンは糖質の為、脳の血流が悪くなってしまい、ストレスの継続は脳に必要な栄養が滞る事になり、脳細胞がダメージを受け弱ったり死んでしまったりして神経ネットワークが失われていきます。

そのダメージを受けた状態が鬱病などの精神疾患です。

つまり、被害妄想状態にあればストレスは継続してしまい、被害妄想を抱いている期間が長くなるほど鬱病などの精神疾患の危険性が高まってしまうのです。

 

社会性とストレス

ストレスのメカニズムをご理解頂いた上で、社会性とストレスの関係に話を進めましょう。

人間は集団で生きる動物です。

集団を形成するメリットは、外敵を逸早く察知して対応出来る事です。

それは集団の中に安心をもたらします。

ですので、人は本能的に孤立を恐れ、繋がりを求めるのです。

その集団の中の安心感は、集団の仲間を信じていなければ得られません。

仲間を信じていなければ、襲ってくるかもしれない敵に囲まれている心境になってしまいます。

これこそが「社会性は信じる事で成り立っている」の原点です。

集団の仲間が信じられなければ、狼の群れに迷い込んだ羊の心境になってしまいますので、群れにいる限りストレスが継続してしまいます。

群れにいる事がストレスになっていれば、そのストレスから逃れるには引きこもるしかありません。

それが「引きこもり」です。

しかし人間の脳は筋肉と同じで、使えば発達し、使わなければ退行してしまいます。

引きこもって、他者とのコミュニケーションが無くなれば、当然コミュニケーションに係わる脳の部位が退行してしまい、引きこもりの期間が長くなればそれだけ社会復帰も困難になってしまいます。

コミュニケーションで大切なのは表情による情報伝達ですので、メールやSNSでは意味がありません。

 

このストレスの理屈で考えると、秋葉原事件などの無差別殺傷事件を起した犯人が、口を揃えたように「誰でも良かった」と言う理由が分かると思います。

彼等は一様に社会性が低くかった為、目に映る人を敵の様に感じていたのでしょう。

狼の群れに迷い込んだ羊は目の前の狼を蹴散らさなければ群れから出られません。

また、豊中で起きた隣人殺害事件の様に、数十箇所も刺して「殺意は無かった」と言うのも、動物的に見れば理解出来ます。

捕食動物は狙って獲物を殺しますが、草食動物が捕食動物に立ち向かう時は全力で攻撃しますが止めは刺しません。

豊中の事件の犯人は被害妄想で嫌がらせを受けていると思い込み、身を守ろうと全力で刺した結果、相手は死んでしまったと言う事だと思います。

しかし殺された人やそのご家族は、被害妄想で滅多刺しにされては堪った物ではありません。

この犯人は、「子供がドアを叩く音がうるさい」と被害者に文句を言っていたとの事ですが、その音もストレスが原因で聞えていた可能性が高いのです。

その原因については第5章で書く事にします。

こうした事件の犯人は、他者への不信を募らせて行った結末でもあるのです。

 

被害妄想に説得は無意味

被害妄想を持つ人に、多くの人は「それは被害妄想だ」と言って説得を試みます。

しかし、被害妄想を持つ人に説得を試みても、一旦は納得しても直ぐに元に戻ってしまいます。

その理由も、ストレスの理屈で説明できます。

ストレスは扁桃体が危険や不快を感じて発生します。

しかし、説得で納得するのは前頭葉です。

前頭葉で納得しても、扁桃体が危険を感じていれば不安が消える事はありません。

言葉による説得で前頭葉は理解しても、扁桃体には言葉が通じないので理解出来ません。

しかも人間の脳は、危険が迫った時に考えてから行動していては手遅れになってしまう為、扁桃体が危険を察知すると前頭葉の働きが抑えられて扁桃体主体の脳に切り替わってしまう様に出来ているのです。

つまり、落ち着いている時に説得すれば納得はしますが、一度扁桃体が危険を感じれば、前頭葉で納得した事など吹き飛んでしまうのです。

ですので、被害妄想に説得は無意味になってしまうのです。

被害妄想の人を納得させるには、言葉の通じない扁桃体に教えるしか有りません。

言葉の通じない扁桃体に教える事こそ「経験」なのです。

それは言葉を持たない犬や猫の学習と同じ理屈です。

だからこそ、盗聴器や盗撮カメラなど仕掛けられていないと分かっていても調査が必要なのです。

調査を目の当りにし、実際の盗聴器や盗撮カメラを見て、実際に試して性能を知る。

そうする事で、扁桃体の感じる不安を解消するのです。

場合によっては、TVの盗聴特集のビデオも使い、少しの実験とレクチャーをすればTVの盗聴特集の嘘が自分で見抜けるようになります。

盗聴特集の嘘を自分で見抜けるようになれば、それに付随した妄想は根底から崩れ去ります。

人間は見たり聞いたりしているだけでは、世界を認識しているに過ぎません。

認識した世界を触る事で確認しているのです。

妄想とは確認もしていない事を、自分勝手に認識しているに過ぎません。

被害妄想を外すと言う事は、そう言った経験による確認作業の繰り返しです。

また、病気を発症していた場合は投薬で不安を押さえて扁桃体を鎮めて、前葉の縛りが無くなるので、拗らせてさえいなければ、被害妄想だったことを自覚しやすくなります。

 

最初から読む

第5章へ